弁護士法人はるか|青森法律事務所

相続ー遺産相続3

Q 私には愛人との間に認知をしていない未成年の息子がいます。この子には不憫な思いをさせてしまっていますが、せめて親として最期に財産を残したいと考えています。どのような遺言にすべきでしょうか。
A 認知していない隠し子には遺産相続権がありません。認知をされていれば、被相続人との親子関係が法的に明らかになるので、直系卑属として遺産相続をすることが出来ます。遺言により認知をした上で、相続させるか、死亡前に遺言書を利用し、認知していない子に相続する旨を記載するとよいでしょう。
Q 私の夫は、すぐに私に暴力を振るいます。生活費も入れてくれなかったので離婚も考えましたが、応じてもらえませんでした。私は親から相続した財産があるのですが、私が死んだときに夫に相続させないようにすることはできますか。
A 推定相続人を廃除する意思表示を遺言ですることができます。配偶者・子等の相続人には民法上法定相続分が定められています。これと異なる相続分にしたい場合には、遺言に相続分を明記しておけばその相続分が法定相続分に優先されます。これを相続分の指定といいます。配偶者は遺留分権利者であるため、一定の割合の相続分を残しておかなければなりません。しかしながら、事情によっては特定の相続人の相続分をゼロにして遺留分も残したくない場合もあり得るでしょう。このような場合「推定相続人の廃除」(民法892条)という手段も考えられます。「推定相続人の廃除」とは、①遺留分を有する推定相続人が被相続人を虐待し、もしくはこれに重大な侮辱を加えたとき、または、②遺留分を有する推定相続人にその他著しい非行があったときは、このような推定相続人から相続権を喪失させる制度です。廃除は家庭裁判所に申し立てることもできます。しかし、生前に廃除を申し立てたがためにさらに激しい暴力を振るわれてしまう危険もあります。そこで、遺言により秘密裏に廃除の意思表示をした方がよい場合もあるでしょう。なお、同じく推定相続人の相続権を喪失させる制度として「相続欠格」(民法891条)というものがあります。これらは、推定相続人の廃除と違い、一定の事情がある場合に、被相続人の意思表示がなくても、当然に相続資格を失うものです。
Q 私は5年前に離婚し、長男は私が、幼い次男は元妻が引き取りました。元妻は生活が厳しかったようなので、決められた養育費以外にも次男のためと思い何くれと援助をしてきました。そんな中、2年前まとまったお金を貸して欲しいと言われ、次男のためと思い300万円を元妻に貸しましたが返済されていません。元妻の債務は免除するので、これをもって次男への相続としたいです。
A 元妻の債務を免除する遺言にし、次男には財産を残さないことになる経緯や理由を丁寧に説明するとよいでしょう。元妻に300万円の債権を持っている遺言者が、元妻に対して債務の返還を免除するという遺言書を作成することになります。この遺言による債務の返還免除は免除を受けた者にとっては300万円を遺贈したと同じ意味となります。次男に財産を残さないとすれば遺留分減殺請求権を行使される可能性があります。この権利行使を阻止することは難しいですが、丁寧に事情を説明することにより、遺留分権利者が権利行使を差し控えることもあり得ます。そこで次男にのみ財産を残さない遺言とする場合には、元妻に対するこれまでの援助経緯や300万円の貸付及びその免除はすべて次男のためであるとの理由等を十分に付言しておかれることをお勧めします。