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民法第1046条 ― 相続における遺留分侵害額請求の解説

民法第1046遺留分侵害額請求権

  1. 請求できる人(遺留分権利者)

遺留分を持っているのは、

兄弟姉妹には遺留分はありません。
その権利は相続人だけでなく、その承継人(相続人から権利を受け継いだ人)も行使できます。

  1. 請求の相手

遺留分が侵害されている場合、遺留分権利者は、

ここで注意すべきなのは、相続分の指定を受けた相続人や特定財産承継遺言で財産をもらった相続人も「受遺者」として扱われる点です。

  1. 請求できる内容

遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求できます。
以前の「遺留分減殺請求」では財産そのものを取り返すような仕組みでしたが、2018年改正以降は金銭での請求に一本化されました。

これにより、例えば「自宅不動産を全部長男に相続させる」という遺言があった場合でも、次男は不動産を共有せず、金銭で補償を受ける形になります。

具体例

父が亡くなり、全財産5,000万円を長女に遺贈するという遺言があった場合。
相続人は母と子ども2人(長女・長男)。

この場合、母と長男は長女に対し、合計2,500万円の金銭請求が可能になります。

この条文の背景と意義

改正前の「減殺請求」は不動産の共有を生んでトラブルが絶えませんでした。
改正後の第1046条は、遺留分を「金銭で清算」するルールを設けることで、相続関係をよりシンプルにし、争いを減らすことを目的としています。

ポイントまとめ

この条文は、実際の相続争いで最も多く使われる規定のひとつです。特に「請求額はいくらになるのか」「誰に対して請求できるのか」が大きな論点になります。