2025.9.7 相続
民法第1050条 ― 特別の寄与と特別寄与料請求の
民法第1050条 ― 特別寄与料の請求
- 特別寄与者とは?
この条文でいう「特別寄与者」とは、
- 相続人ではない親族
- しかも相続を放棄した人や、欠格・廃除された人も除く
つまり「相続権はないが、被相続人に尽くした親族」のことを指します。
典型的なのは「長男の妻(嫁)」などです。嫁は法律上の相続人ではありませんが、長年にわたり介護や看護を担うケースが少なくありません。
- 対象となる貢献
特別寄与料の対象になるのは、無償で行った
- 療養看護(介護や看病)
- その他の労務提供
これによって被相続人の財産を維持・増加させたことが必要です。
例:介護施設に入れずに済んだため、財産が減らなかった場合など。
- 請求できる内容
相続が始まった後、特別寄与者は相続人に対して「特別寄与料」の支払いを請求できます。
これは遺産分割の一部ではなく、相続人に対する金銭債権として認められる点が特徴です。
具体例
夫が亡くなり、相続人は妻と子ども2人。
夫の介護を長年にわたり無償で担っていたのは、長男の妻(嫁)だった。
→ 長男の妻は相続人ではないが、特別寄与者として相続人(妻・子ども2人)に対し、介護の貢献に応じた金銭を請求できる。
この条文の背景
改正前は「寄与分」といって、相続人にしか認められない制度しかありませんでした。
そのため、相続人でない親族――特に嫁や婿がどれだけ尽くしても報われない不公平がありました。
第1050条はこの不公平を解消するために新設された規定です。
ポイントまとめ
- 特別寄与者は「相続人ではない親族」
- 無償の介護・労務で財産を維持・増加させた場合に請求できる
- 相続開始後に相続人へ「特別寄与料」を金銭で請求できる
- 嫁や婿など、相続人になれない立場の人を救済する制度
この条文は、介護を担った親族の報われなさを解消するために作られた新制度で、実務でも注目されています。金額の算定や請求の仕方は今後も裁判例で具体化されていく部分です。