2025.9.6 相続
自筆証書遺言に必要な検認の解説
民法第1004条 ― 遺言書の提出と検認
- 遺言書の保管者は家庭裁判所に提出(第1項)
遺言書を保管している人は、相続が始まったと知ったら、遅滞なく家庭裁判所に提出し、検認を請求しなければなりません。
保管者がいない場合でも、相続人が遺言書を発見したら同じ義務があります。
検認とは、家庭裁判所が遺言の形や内容を確認し、偽造や変造を防ぐために記録に残す手続きです。遺言の有効・無効を判断する手続きではありません。
- 公正証書遺言は対象外(第2項)
公正証書遺言の場合は、公証人が作成・保管しており、偽造や改ざんの心配がほとんどありません。そのため検認の手続きは不要です。 - 封印がある遺言書の開封(第3項)
封筒に封印がされた遺言書を開ける場合は、家庭裁判所で相続人や代理人の立会いがなければなりません。勝手に開封すると、5万円以下の過料に処せられる可能性があります(民法第1005条)。
具体的なイメージ
- 自筆証書遺言を金庫から見つけた場合
→ 相続人が家庭裁判所に提出して検認を受ける必要があります。勝手に開けて中を確認してはいけません。 - 公正証書遺言がある場合
→ 公証役場に正本や謄本が保管されているので、検認は不要です。
この条文の背景
遺言は、亡くなった人の意思を実現するための重要な書類ですが、同時に相続人の利害が大きく絡むため、トラブルになりやすいものです。もし発見した人が勝手に開けたり隠したりすると、後から大きな争いに発展しかねません。
そこで、家庭裁判所のもとで開封・記録する「検認」が義務づけられているのです。
ポイントのおさらい
- 自筆証書遺言などを発見したら、すぐに家庭裁判所へ提出して検認を受ける
- 公正証書遺言は検認不要
- 封印がある遺言書は、家庭裁判所で相続人の立会いのもとで開封する
この条文は「遺言を発見したときの最初の対応」を定めたもので、実務的に非常に重要です。特に自筆証書遺言を見つけた場合に「勝手に開けてはいけない」という点はよく誤解されるので、注意が必要です。