2025.9.6 相続
公正証書遺言の解説
民法第969条 ― 公正証書遺言の方式
公正証書遺言は、公証人役場で公証人に作成してもらう遺言です。そのため、次のような厳格な手続きが求められます。
- 証人が2人以上立ち会うこと(第1号)
遺言の場には必ず2人以上の証人が立ち会わなければなりません。証人には制限があり、未成年者や相続人本人などはなれません。 - 遺言者が口頭で内容を伝えること(第2号)
遺言者は、自分が残したい内容を公証人に口頭で伝えます(口授)。文章を直接書く必要はありません。 - 公証人が筆記し、読み聞かせや閲覧をすること(第3号)
公証人は遺言者の口述をもとに文章を作成し、それを遺言者や証人に読み聞かせたり、見せたりします。これにより内容に間違いがないかを確認します。 - 遺言者と証人が署名押印すること(第4号)
内容に問題がなければ、遺言者と証人が署名・押印します。遺言者が署名できないときは、公証人が理由を付記して代筆できます。 - 公証人が方式に従ったことを付記し、署名押印すること(第5号)
最後に、公証人自身が「この遺言は法律に定められた方式で作成した」という旨を付け加え、署名・押印します。
公正証書遺言の特徴
- 無効になるリスクが低い
公証人が関与し、証人も立ち会うため、方式の不備や偽造の心配がほとんどありません。 - 原本が公証役場に保管される
公正証書遺言は正本と謄本が作成され、原本は公証役場に保管されます。遺言者が亡くなった後も確実に内容を確認できます。 - 費用と手間がかかる
公証人への手数料が必要であり、証人2人の手配も必要です。ただし安心感は非常に大きいといえます。
具体的な流れ
- 遺言者が公証役場に出向き、公証人に遺言内容を口述する
- 公証人が文案を作成し、遺言者と証人に読み聞かせる
- 遺言者と証人が署名押印する
- 公証人が方式を確認し、署名押印して完成
まとめ
公正証書遺言は、費用と手間はかかりますが、形式不備で無効になる心配がほぼない、最も信頼性の高い遺言の方法です。
確実に意思を残したいときや、相続人間で争いが起きそうなときには、公正証書遺言が推奨されます。