2025.9.6 相続
遺言の撤回と効力の範囲の解説
民法第1022条 ― 遺言の撤回
- いつでも撤回できる
遺言者は、自分の意思であれば遺言を「全部」でも「一部」でも撤回することができます。
たとえば「全財産を長男に相続させる」と書いた遺言があっても、後から「やはり配偶者や次男にも分けたい」と考え直したら、新しい遺言を作成することで古い遺言を撤回できます。 - 方式に従う必要がある
撤回するときも、法律で定められた遺言の方式(自筆証書遺言、公正証書遺言など)に従わなければなりません。
単なる口約束やメモでは撤回の効力は認められません。
実務的な意味
- 遺言は「最終意思」を反映するものなので、遺言者が生きている限り変更可能です。
- 家族関係や財産状況は変わりやすいので、古い遺言を放置せず、必要に応じて書き直すことが大切です。
- 最新の日付の遺言が優先されるため、複数の遺言が存在する場合は「最後に作成されたもの」が効力を持ちます。
具体例
- 2015年に「長男に全財産を相続させる」と書いた遺言を作成した
- その後、2022年に「配偶者に自宅を相続させ、残りを子ども2人で分ける」と新しい遺言を作成した
→ この場合、後の遺言が優先され、前の遺言は撤回された扱いになります。
背景と考え方
人の事情は時間とともに変化します。財産が増えたり減ったり、家族関係が変わったりするのは自然なことです。
第1022条は、遺言者の自由を保障し、常に「最新の意思」を尊重するために設けられている規定です。
ポイントのおさらい
- 遺言はいつでも撤回できる
- 撤回には遺言の方式が必要
- 最新の日付の遺言が最も強い効力を持つ
この条文を踏まえると、遺言は一度作って終わりではなく、人生の節目ごとに見直すのが望ましいといえます。