2025.9.7 相続
民法第1048条 ― 相続における遺留分侵害額請求権の期間制限の解説
民法第1048条 ― 請求できる期間(時効)
- 知ったときから1年(短期消滅時効)
遺留分権利者が、- 相続が始まったこと
- 自分の遺留分を侵害する贈与や遺贈があったこと
の両方を知った時から1年以内に請求しなければ、権利は時効で消滅します。
つまり、遺言の内容や贈与の事実を知った時点から「1年以内に行動しないと手遅れ」になるのです。
- 相続開始から10年(除斥期間)
相続開始から10年が経過したときも、請求権は消滅します。
この場合は、知っていたかどうかに関係なく、自動的に消滅する絶対的な期限です。
具体例で考える
- 父が2020年に亡くなり、遺言で「全財産を長男に相続させる」と書かれていた。
- 次男が2021年5月に遺言の存在を知った場合。
→ 次男は「遺言の内容を知った時」から1年以内、つまり2022年5月までに遺留分侵害額請求をしなければならない。
→ ただし、たとえ知らなかったとしても2030年(相続から10年)が経てば完全に権利は消滅する。
この条文の背景
相続関係は早期に確定させなければ、いつまでも争いが続いてしまいます。そこで法律は「1年」という短期の時効と、「10年」という長期の除斥期間を設け、遺留分請求を迅速に行わせる仕組みにしています。
ポイントまとめ
- 遺留分侵害額請求は「知ってから1年」「相続開始から10年」のどちらか早い時点で時効消滅
- 知ったかどうかに関係なく、10年を過ぎれば完全に権利は消える
- 相続争いを長期化させないための制度
この条文は、実務でとても重要です。遺留分請求を考えている人にとって「いつからカウントが始まるのか」が争点になることも多く、裁判でもしばしば問題になります。