2025.9.6 相続
遺言による相続分の指定の解説
― 遺言による相続分の変更
法律には相続分の割合(第900条・901条)が定められていますが、第902条は「遺言がある場合はその内容を優先できる」と定めています。
つまり、被相続人は自分の遺言で「誰にどのくらいの割合を相続させるか」を決めることができるのです。さらに、その決定を自分ではなく第三者(信頼できる人物など)に委ねることも認められています。
ポイントを整理すると
- 遺言で相続分を自由に指定できる
例:子どもが2人いる場合、通常は等分ですが「長男に3分の2、次男に3分の1」と指定することが可能です。 - 第三者に委託できる
たとえば「相続人の取り分はXさんに決めてもらう」と遺言で書いておくこともできます。実務では弁護士や信託会社などが指定されるケースがあります。 - 一部だけ指定することも可能
共同相続人のうち一部の人の相続分だけを決めた場合、残りの人の分は法律で定められた割合(第900条や901条)に従って決めることになります。
具体例で考える
- 子どもが2人いるケースで、遺言で「長女に2分の1、長男に4分の1」と指定した場合
→ 長女と長男の取り分はその通りになり、残りの4分の1は法定相続分に従って配分されます。 - 配偶者と子ども2人がいる場合で「配偶者に全財産を相続させる」と遺言があれば、その通りに扱われます(ただし遺留分を侵害しない範囲で)。
この条文の背景
相続は家族の事情によってさまざまです。子どもの中でも特に被相続人の生活を支えてきた人がいれば、その人に多めに与えたいと考えるのは自然なことです。
第902条は、画一的な法定相続分だけでなく、被相続人の意思を柔軟に反映させるために設けられた規定といえます。
注意点
ただし、相続人には「遺留分」という最低限の取り分が法律で保障されています。遺言で極端に偏った配分をしても、遺留分を侵害された相続人は請求することができます。この点を理解しておかないとトラブルになりやすいので要注意です。