2025.9.6 相続
遺言同士が矛盾したときの解説
民法第1023条 ― 遺言の抵触と撤回の推定
- 後の遺言が優先される(第1項)
もし前に作った遺言と、後で作った遺言の内容が食い違っているときには、矛盾する部分に限って「前の遺言は後の遺言で撤回された」とみなされます。
たとえば、
- 2018年の遺言で「自宅を長男に相続させる」
- 2022年の遺言で「自宅を長女に相続させる」
と書かれていれば、自宅に関する部分については2022年の遺言が優先され、2018年の遺言は撤回された扱いになります。
- 生前処分との関係(第2項)
このルールは、遺言と生前の法律行為が矛盾する場合にもあてはまります。
たとえば、
- 遺言で「A土地を次男に相続させる」としていたのに、その後に生前でA土地を第三者に売却してしまった
という場合には、売却という生前処分と矛盾するので、その土地に関する遺言は撤回されたものとみなされます。
この条文の意味
遺言は「本人の最終意思」を尊重するものです。時間の経過に伴い意思が変わることは当然あり、そのときには最新の意思を優先すべきです。
第1023条は、遺言が複数存在したり、生前の行動と食い違ったりしたときの調整ルールを示しているといえます。
ポイントのおさらい
- 前と後の遺言が矛盾するときは、後の遺言が優先される
- 生前の処分(売却など)と遺言が矛盾したときも、遺言が撤回されたものと扱う
- 遺言者の「最新の意思」を尊重するための規定
この条文を踏まえると、遺言は一度作ったら安心ではなく、定期的に見直すことが大切だと分かります。相続財産を処分したときや家庭状況が変わったときには、遺言内容が古くなっていないか確認することが重要ですね。