2025.9.7 相続
民法第1046条 ― 相続における遺留分侵害額請求の解説
民法第1046条 ― 遺留分侵害額請求権
- 請求できる人(遺留分権利者)
遺留分を持っているのは、
- 配偶者
- 子(直系卑属)
- 親(直系尊属)
兄弟姉妹には遺留分はありません。
その権利は相続人だけでなく、その承継人(相続人から権利を受け継いだ人)も行使できます。
- 請求の相手
遺留分が侵害されている場合、遺留分権利者は、
- 遺言で財産をもらった受遺者
- 生前贈与を受けた受贈者
に対して請求できます。
ここで注意すべきなのは、相続分の指定を受けた相続人や特定財産承継遺言で財産をもらった相続人も「受遺者」として扱われる点です。
- 請求できる内容
遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求できます。
以前の「遺留分減殺請求」では財産そのものを取り返すような仕組みでしたが、2018年改正以降は金銭での請求に一本化されました。
これにより、例えば「自宅不動産を全部長男に相続させる」という遺言があった場合でも、次男は不動産を共有せず、金銭で補償を受ける形になります。
具体例
父が亡くなり、全財産5,000万円を長女に遺贈するという遺言があった場合。
相続人は母と子ども2人(長女・長男)。
- 遺留分算定基礎財産:5,000万円
- 遺留分全体:1/2 × 5,000万 = 2,500万円
- 母と長男の遺留分は、それぞれ1,250万円
この場合、母と長男は長女に対し、合計2,500万円の金銭請求が可能になります。
この条文の背景と意義
改正前の「減殺請求」は不動産の共有を生んでトラブルが絶えませんでした。
改正後の第1046条は、遺留分を「金銭で清算」するルールを設けることで、相続関係をよりシンプルにし、争いを減らすことを目的としています。
ポイントまとめ
- 遺留分侵害額請求は「金銭請求」に一本化された
- 相手は受遺者・受贈者(相続分指定を受けた相続人も含む)
- 遺留分権利者は配偶者・子・親(兄弟姉妹は対象外)
- 2018年改正で実務上のトラブルを解消するため導入
この条文は、実際の相続争いで最も多く使われる規定のひとつです。特に「請求額はいくらになるのか」「誰に対して請求できるのか」が大きな論点になります。