2025.9.6 相続
遺言書や遺贈財産を破棄した場合の解説
民法第1024条 ― 遺言書や遺贈目的物を破棄した場合
- 遺言書を故意に破棄したとき
遺言者が自分で遺言書を破ったり燃やしたりした場合、その破棄した部分については「撤回した」とみなされます。
つまり、破棄という行為自体が「もうこの内容は有効にしたくない」という意思表示だと推定されるのです。 - 遺贈の目的物を故意に破棄したとき
遺言で特定の財産を遺贈する(例:自宅を長女に与える)と書いていたにもかかわらず、その目的物を故意に壊したり処分した場合も、撤回したものとみなされます。
たとえば、自宅を解体してしまったら、その遺贈の部分は無効になります。
この条文の意味
遺言の効力は遺言者の最終的な意思に基づくべきです。遺言者がわざと遺言書や財産を破棄したなら、それは「その内容を実現させる意思がなくなった」と考えるのが自然です。
第1024条は、このような遺言者の行動から意思を読み取って、形式的な撤回手続きをしていなくても「撤回された」と扱う仕組みを整えています。
具体例
- 遺言書を自分で破って燃やした
→ その遺言は撤回されたとみなされる。 - 遺言で「A車を次男に遺贈する」と書いたが、その車を廃車にした
→ 車の遺贈部分は撤回された扱いになる。
注意点
- 「故意に」破棄した場合に限られます。火事など事故で焼失した場合は撤回とみなされません。
- 遺言書の一部を破棄したときは、その部分のみが撤回され、残りは有効です。
ポイントのおさらい
- 遺言書を自分で破棄したら、その部分は撤回されたものと扱う
- 遺贈の目的物を故意に壊したり処分した場合も撤回されたものと扱う
- 遺言者の行動から「撤回の意思」を推定するための規定
この条文を理解すると、遺言は書いたままにするだけでなく、破棄や処分の行為そのものが意思表示になることがわかります。