2025.9.7 相続
民法第1043条 ― 遺留分算定の基礎となる財産価額の解説
民法第1043条 ― 遺留分算定の基礎財産
- 基本の考え方(第1項)
遺留分の金額を計算するには、相続開始時点で被相続人が持っていた財産だけでなく、生前に贈与した財産も考慮します。そして、そこから借金などの債務を差し引いた額を基準にします。
計算式で表すと、
(相続開始時の財産 + 贈与財産) − 債務 = 遺留分算定の基礎財産
- なぜ贈与財産を加えるのか
もし贈与を考慮しなければ、被相続人が生前に大量の財産を他人に贈与してしまうことで、相続開始時に財産がほとんど残らず、遺留分が形骸化してしまいます。
その不公平を防ぐため、贈与財産を持ち戻して計算に入れる仕組みがあるのです。
- 債務を控除する理由
相続財産はプラスの財産だけでなくマイナスの財産(借金)も含みます。
遺留分も実際の純資産を基準にしなければならないので、必ず債務を差し引いて計算します。
- 具体例
- 被相続人が亡くなった時点での財産:3,000万円
- 生前に贈与していた財産:1,000万円
- 借金:500万円
→ 遺留分算定の基礎財産は
(3,000万 + 1,000万) − 500万 = 3,500万円
相続人が子ども2人なら、遺留分は基礎財産の2分の1 = 1,750万円。
これを2人で分けるので、それぞれの遺留分は875万円となります。
この条文の意義
第1043条は「遺留分を守るために、どこまでを相続財産とみなすか」を明確にした規定です。
- 生前贈与まで含めて計算することで、遺留分を空洞化させない
- 債務を差し引くことで、現実的な純資産を基準にできる
という2つの機能を持っています。
ポイントまとめ
- 遺留分の計算は「相続時の財産 + 贈与 − 債務」で行う
- 生前贈与も含めるのは、遺留分を守るため
- 借金は必ず差し引く
この条文を理解すると、遺留分をめぐる争いで「贈与をどこまで算入するか」「債務をどう扱うか」が重要な論点になることが分かります。実際、裁判でもしばしば争点になる部分です。