2025.9.6 相続
撤回された遺言の行方と効力の解説
民法第1025条 ― 撤回された遺言の効力回復の禁止
- 撤回された遺言は戻らない
第1022条から第1024条までの規定によって撤回された遺言は、撤回の原因となった行為が後から取り消されたり無効になったとしても、自動的には効力を取り戻しません。
例えば、
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- 後の遺言が作られて前の遺言と矛盾したため、前の遺言が撤回された
- その後、後の遺言が取り消されたり無効とされた
この場合でも、前の遺言が復活することはありません。
- 例外:詐欺や強迫による場合
ただし、撤回行為が詐欺や強迫によるものであった場合は例外です。そのときは、撤回の意思自体が真意によるものでないため、効力を回復することが認められます。
この条文の意味
遺言は、亡くなった人の「最終の意思」をできるだけ明確にするための制度です。もし一度撤回した遺言が状況次第で勝手に復活してしまうと、相続人や利害関係人の間で混乱が生じます。
そのため、原則として「撤回されたら戻らない」というシンプルなルールが設けられているのです。
具体例
- 2015年の遺言で「自宅を長男に相続させる」
- 2020年の遺言で「自宅を長女に相続させる」
→ 長女への遺言が優先され、長男への遺言は撤回された扱いになる。
その後、2020年の遺言が無効になったとしても、2015年の遺言は自動的には復活しない。
ポイントのおさらい
- 撤回された遺言は基本的に復活しない
- 撤回行為が詐欺や強迫による場合のみ、効力が回復する可能性がある
- 遺言の効力を安定させ、相続の混乱を防ぐための規定
この条文を踏まえると、遺言を作るときは「もしものときに古い遺言が復活するかも」という期待はできないことが分かります。遺言の内容を変えたい場合は、その都度きちんと新しい遺言を作り直すのが大切です。